Entry

特集記事

“ここだから出会える本”を探して、小さな本屋さんへ

“ここだから出会える本”を探して、小さな本屋さんへ

WEBショップで本を買うことや、電子ブックを利用することも多くなっている今日この頃。実際に書店に足を運び、探していた本だけでなく、偶然目に留まった本を手に取る楽しみを改めて感じてみませんか。今回は、特色のある選書が魅力の小さな本屋さんを紹介します。

本屋青旗 Ao-Hata Bookstore

何を感じるのも自由!視覚文化をテーマにした書店

「本」とひと口に言っても、その種類はさまざまです。2020年10月にオープンした「本屋青旗 Ao-Hata Bookstore」は、視覚文化をテーマに掲げ、アートブックやZINE(個人が制作する冊子・雑誌)などを中心に取り扱う書店です。

薬院駅から薬院新川沿いに歩くこと約7分で到着。時を経た建物に現れる青と白のエントランスに期待が高まります。

階段を上った先に広がる空間には、一つひとつがアート作品のような書籍約300種がずらりと並んでいます。美術や写真、デザイン、オブジェ、彫刻などテーマも雰囲気もそれぞれ。本自体にしかけがあったり、めずらしい素材が使われていたりして、一冊ずつ中身を確かめたくなります。

オーナーはデザインに関する仕事に携わっていた川﨑雄平さん。福岡にはこのようなアートブックに触れられる場所が少なかったことや、ご自身が普段見ているものと一般的に評価されるものにギャップを感じ、この店を開いたのだそうです。また、店内では書籍の販売のほかに、2~3週間ごとにアーティストによる展示を開催。川﨑さんが注目する福岡ではまだあまり紹介されていない作家やジャンルの展示が中心です。

「ここに来ることでアートに興味を持ってもらえたら…とまでは思っていません。アートやデザインへの関わり方は人それぞれです。興味を持つ方も、視野を広げる方も、見聞を深める方もいるかもしれません。気軽に立ち寄って、この場所を自由に楽しんでもらえるとうれしいです」と川﨑さん。そういった思いから、来た人に積極的に話しかけることは少ないそうですが、気になることを尋ねると真摯に教えてもらえます。

店内が見えないので、階段を上るのにほんの少し勇気が必要かもしれませんが、このロゴのデザインにぴんと来るものがあればきっと何かを感じられるはずです。視覚からの刺激を受けに、訪れてみてはいかがでしょうか。

●本屋青旗 Ao-Hata Bookstore

住所:福岡市中央区薬院3-7-15 2F
電話:なし
営業:12:00 ~19:00
定休日:水曜
アクセス:西鉄天神大牟田線「薬院」駅より徒歩7分、西鉄バス「新川町」バス停より徒歩2分
ホームページ: https://aohatabooks.com/
Instagram: @aohatabooks

Nautilus

フランスにまつわる本のみを扱うブックカフェ

まちのランドマーク的存在の商業施設から個性溢れる個人店まで、あちこちにある話題のスポットの散策が楽しい六本松エリア。

2020年夏に“まちのコミュニティスペース”というコンセプトのもと誕生した「裏・六本松プロジェクト」の2Fにブックカフェ「Nautilus(ノティリュス)」はあります。

オーナーはフランス西部の都市・ナント出身のジャンマリー・プルドンさん。フランスで書店に勤めていた時に「一生この仕事をするならほかの国のやり方も見ておきたい」と海外での暮らしを思い立ち、小さい頃からアニメで親しんでいたことや、友人が住んでいたことから日本へ。大阪に1年ほど滞在する予定が、福岡出身の奥様と出会ったことにより日本で暮らすことになったのだそうです。

ジャンマリーさんは書店を開くならブックカフェにしたいと考え、コーヒーの知識や技術を身に付けるために約6年間スペシャルティコーヒーで知られる「ハニー珈琲」に勤務していました。店内では「ハニー珈琲」の豆を使ったカフェメニューを味わいながら本を読むことができます。写真のカフェラテ(500円)などのドリンクには、チョコレートやビスケットなどが添えられているのもうれしいですね。この時のチョコレートは店内で販売も行う、ベトナムで2人のフランス人が立ち上げた「MAROU(マルゥ)」のものでした。

店内に並ぶ本はすべてフランスにまつわるもの。多くがフランス語で出版されたものの翻訳本であり、そのほかにフランス文化を伝える本などが選書されています。世界的に知られる名作と呼ばれる作品から、フランスのいまを伝える現代文学、漫画、絵本、料理本までジャンルはさまざま。フランス文学と構えることなく、気軽に手に取りたくなる本が目に飛び込んできます。

おすすめの本を尋ねると、概要やフランスでの評判などを交えながら丁寧に説明してくれるジャンマリーさん。「この規模だからお客さまと本についてゆっくり話せますし、これが私のやりたかったスタイルです」と教えてくれました。今後はフランスにまつわるイベントやフランス製商品の販売も充実させる予定なのだそう。福岡にいながらフランス文化に触れられる貴重な場所として、ますます注目を集めそうですね。

●Nautilus(ノティリュス)

住所:福岡市中央区谷1-14-2-3 裏・六本松2F
電話:090-3735-8372
営業:11:00 ~19:00
定休日:日・月曜 ※月曜はフランス語教室を開催
アクセス:西鉄バス「六本松三丁目」バス停すぐ
ホームページ: https://librairiecafe-nautilus.com/
Instagram: @libr_nautilus

うなぎBOOKS 旧塚本邸

八女に通いたくなる、本と人とをつなぐ書店

筑後のアンテナショップに始まり、オリジナル商品の開発、アートプロジェクト、トラベルガイドの出版など多岐にわたる活動を行う八女市「うなぎの寝床」。2021年9月に新しい活動がまたひとつスタートしました。

八女福島伝統的建築群保存地区にオープンした「Craft Inn 手 [té]」は、八女を中心とした九州のクラフトを体感できる宿です。伝統的建築物を改修した旧塚本邸と旧丸林本家蔵に客室があり、旧塚本邸のフロント部分に「うなぎBOOKS」が併設されています。

当初は「うなぎの寝床」の活動にまつわる本のみを取り扱う予定だったところを、書店のマネージャーとして参加した本間悠さんの想いを受けて方向転換。“まちの本屋”として多様なジャンルの本が並んでいます。

本間さんは、知る人ぞ知る本のエキスパート。佐賀の書店に勤めている時に独自の目線や方法でプッシュしていた本屋大賞ならぬ「ほんま大賞」に選んだ作品が話題を呼び、実際の本屋大賞に選ばれるなど、本好きの人々から一目置かれる存在です。「うなぎBOOKS」の選書は本間さんと代表の白水さんが手がけています。

本のセレクトについて本間さんに尋ねると、「自分たちが説明できるもの。そして読む人の顔が見えるものを選んでいます」という答えが返ってきました。「私たちの仕事は本と人とをつなぐことです。そのために、本のテーマを理解し、手に取ってくれる人がどのように感じるかということまでを考えています」。

本の並び方も特徴的です。一般的には文学、実用、言語…などのジャンルで分類されていますが、ここでは「かんがえる」「しんじる」などのキーワードによって本がまとめられています。好きなジャンルの本棚だけを見るのではなく、キーワードから興味が広がりそうな紹介の仕方ですね。そのおかげか、「『この本、初めて知りました』と言われることも多いんですよ」と本間さん。

「目指しているのは、まちの八百屋さんや酒屋さんみたいな存在の本屋です。周囲には 私を“御用聞き”と思ってくださいと言っているんですよ(笑)。『面白い本ある?』という感じで訪れてもらえたら」。愛情たっぷりの本のレコメンドを聞いていると、どれも読みたくなること間違いありません。近くに住む人がうらやましくなる書店です。

●うなぎBOOKS 旧塚本邸

住所:八女市本町120-1 旧塚本邸
電話:0943-24-6811
時間: 11:00~17:00
定休日:火・水曜(祝日の場合営業)
アクセス:西鉄バス「西唐人町」バス停より徒歩5分
ホームページ: https://unagino-nedoko.net/
Instagram: @unaginonedoko_books

※記載している情報は2022年2月のものです。営業時間や定休日、価格は変更になる可能性があります。価格は特別な記載がない限り、税込みで表記しています。

この記事をシェア・保存する

  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする
  • LINEでシェアする
  • myrouteに保存

Related posts

こちらもチェック!